なに?と謎を深めても、きりくんのポーカーフェイスからはなんの感情も読み取れない。じ、と涅色の瞳で真っ直ぐに見下ろされたかと思うと、ゆるい力で腕を引かれる。
「、あの、きりくん?」
引かれるがまま移動してきたのは、人気の少ないスペース。明かりの届かない隅っこで、なぜか向き合うわたしときりくん。ハテナを浮かべるわたし、……これは、なんだろう。
「……ぅ、?!」
不意に、ぴたり、頬に添えられた冷たい感触。反射的にぎゅっと目を瞑れば、もう片方の手で前髪を掬われる。はらりと目元に落ちてくる擽ったい感触に、心臓が震える。
……目開けて、と耳元に声が落とされると、誘われるように視界が開く。
「……ん、平気っぽいね」
数秒間、至近距離で瞳を交じわすと、微かにきりくんの表情が和らぐ。仄かにやさしさが溶けた声色は、向けられるたびに心臓が揺さぶられて、すこし困ってしまう。
「……体調は、うん。だいじょうぶ」
……多分、ずっと下を向いてたり周りの視線を気にしていたから。それをきりくんに体調不良だと勘違いさせてしまったのだと思う。
ぎゅっと握った手のひらを胸元で掲げて、もう一度''だいじょうぶ''をアピールすると、きりくんは頬に添えていた手を離して、わたしの手元にある荷物を奪う。



