「あー、ほら。あやこが怯えてる」
だいじょーぶ、怖くないよ……って、爪先で前髪のあたりをゆるやかに撫でて、それを何往復かしたあと、流れるような仕草で横髪を耳にかけてくれる。
微弱な刺激に、びく、とおもわず肩を揺らすと、桜玖さんは、こちらを安心させるように目尻をほどくから、……確かに、こんなふうにふれられたら、桜玖さんのことを本気で好きになってしまうかもしれない。
「大丈夫……です、こわくない、です」
撫でられているところを上目に見つめながら、ふ、と表情が緩ませる。
さほど興味もないだろうわたしにも、たぶん、誰に対しても、こんなふうにフレンドリーに接することができる桜玖さんは、常識の良し悪しに関わらず、すごいひとだとおもう。
……女のひとに節操がないのも、べつに、同意があるならわるいことでもない、はず。
「……さく、攻略失敗…」
「おまえの''ソレ''、こころには通じないってことね」
なんだかすこし楽しそうなふたりに対して、むすっと不機嫌そうな桜玖さん。
「たしかに、手応えねーわ」
桜玖さんは仕上げのように、わたしの頭をこつん、と指先でつついて、あやこ意外と鋼?って。……''鋼''って、メンタルのこと?
「よわくはない……とおもいますけど、鋼ってほどでも……」
よわく脆いガラスのハートも、屈強な鋼も、わたしは持ち追わせていない。
強いていうなら、ガラスと鋼の真ん中(?)くらいだとおもう。なんだろう、プラスチックとか……?
「……んー、と。ちょっと噛み合ってねえな?」
「こころそーいうトコある」
「……(どういうとこ?)」



