「きりくんの、お知り合い、?」
おそるおそる問いかけながら、掴まれたままの手をやんわりとほどく、……間際に視線を落としたら、うっすらと浮かんでいた爪のアトは消えていた。
「お知り合い、ですよねー?」
「……いつ付けた?」
「はは、なんのことかさっぱり」
テンポのいい掛け合い、……やっぱり、きりくんのお知り合いらしい。
内容はよくわからないけど、なんとなく、仲はよさそうに見える。
「勢いで開けてしまって、…それで、……えと」
「こんなアヤシーの、家入れんのだめ」
「……はい」
「怪しくねーわ。ふつーにご挨拶してたのに、おまえが邪魔したの」
おそるおそる顔を上げたら、先程までつり目がちだった目尻はほどかれていて、まあるい瞳も、比較的おだやかに映る。
……よかった。きりくん、怒ってない。
ほっと、心のなかで安心のため息をついていると、なぜか、再びきりくんの瞳がすうっと冷ややかに細められる。
「──────で、なに。桜玖、なずな」
一歩、玄関に足を踏み入れたきりくんは、お知り合い(?)さんの肩をぐいっと乱暴に押す。
……と。
「っ、ぇ……、」
突然現れたのは、ふかくパーカーを被った男のひと。



