nonsense magic




きりくんの身体は、わたしが想像していたよりもずっと冷えやすいらしい。


1日のなかでもとくに、寝起きはぐっと体温が下がってしまう……そうで。


「きゅ、……うにはだめって、お願いした」

「……あー、言えばいんだっけ」


そういう問題じゃなくて、……否定しようと口を開きかけたとき、こつん、と鎖骨のあたりに額があてられた。


肌にふれる、猫っ毛がふわふわ擽ったい。
上目がちに捉えられて、無感情を浮かべる切れ長の瞳が、ゆるりと瞬きを落とした。


そんな動作ひとつさえ、目を離せなくなってしまう。



「ハグ、いい?」


ほんのすこし首をかしげて、語尾を柔らかに溶けさせる。

まるで小さな子供がおねだりをするようなのに、…どこか相手を舐めているように感じるのは、あまやかな声色のせい。
 

きりくんは、ほんとうに、ちぐはぐだ。



「わたしで暖をとる、ってことでしょ……?」

「ハグね」

「だ、だから、……ハグじゃない、の」



きりくんはわたしで暖をとりたいとき、こちらの反応を試すみたいに、わざと''ハグ''という言葉をつかう。


たいしてキョウミのなさそうな表情をしているのに、声だけはすこし楽しそう……で。


……わすれてほしいって言ったのに、いじわるだ。


「きりくんからのハグは、さ。……なんだっけ」

「……っ、おっけー、?」

「ハイせーかい」



────すこしへんてこな朝のルーティーンができあがってしまって、困っている