「何時、今」
「10時半です」
「ん……ごめん。30分遅刻」
「……、(ちこくじゃなくて、ねぼうでは?)」
きりくんは眠たそうに目元を指先でこすると、じい、と下からすくうように瞳を重ねてくるから。
身に覚えのある''それ''に、あわててきりくんから視線をそらすように俯いて、揺れるカーテンからも手を離す。
……はやく、
「わたし先に下降りてる、から」
無意識に歩みのスピードが速まる。不自然に思われない程度に距離を取ったまま、ベッドの横を通りすぎる……─────
「……っ、」
左手首にふれた、冷たい手のひらの感触。
あっという間に絡まれて、ぐっ、と前方に重心が傾くと同時、ベッドが深く沈んだのがわかる。
「っ、……きり、くん」
ふわりと鼻を掠めるのは、自分の服を纏う香りと同じものだから、……警戒心が解かれてしまって、強ばっていた身体から力が抜けていく。
それに気づいたのか、……はたまた無意識か、きりくんはわたしと背中に回した腕を自分の方へと引き寄せて、ぎゅう、と力をこめる。
「……ぬくい」
─────ああ、また、捕まってしまった



