「……ん、」
くぐもったような吐息のあと、ごそ、とブランケットが擦れるような音がした。
揺れるカーテンを片方の手で押さえたまま、日光できらきらと反射する黒髪を見つめていたら、窓の隙間から吹いてきた風が、きりくんの髪をふわっと揺らした。
そのはずみに前髪が目元を掠って、再び、んん、と、寝ぼけたようにこぼしたきりくんは、ゆっくりと瞼をあげて、ひとつ、瞬きを落とす。
ひかりを吸収した瞳がゆるやかにほどかれて、ぱちり、と重なり合って。
「おはよう」
眠そうにとろんと下がる目尻。
あどけない表情に笑みをこぼしていると、……こころ、とすこしの時間差で、なぞるみたいに呼ばれる名前。
「…おはよ」
ふ、と目元が細まって、薄い唇がうっすらと弧を描く。
……本人が気づいてるのかわからないけど、寝起きのきりくんは、いつもよりも纏う雰囲気が柔らかくて、おだやかだ。
「…うん、」
やさしい声と表情は、不意に向けられると反応に困ってしまう。
免疫のないわたしは、毎回のことながら、どきり、心臓を揺らしてしまうけど、これはもう条件反射だからしょうがない、……と開きなおることにした。



