nonsense magic





「きりくん、あさだよ」

「………」


きりくんについてわかったこと、ふたつめ。


このひとは、とても寝起きがわるい。
起きたら不機嫌とかそういう意味ではなくて、単に"起きる"という行為が苦手らしい。


せっかくかけたアラームも鳴った瞬間に丁寧に解除してしまうから、あまり意味をなさない。
でも、起きなければ、という意思はかろうじてあるらしく、上半身だけはベッドの背もたれに寄りかかっているのだ。



「……きり、くん」


気持ちよさそうに眠りにつくきりくんを前にすると、ちくり、仄かに生まれる罪悪感。


……やさしく起こしてあげるのって、どうすればいいんだろう……。


肩を揺する、……とか、直接ふれる方法以外で。



「(…あ、)」


ひとつ、思いついた。


足音に気をつけながら窓側へと移動し、モスグリーンのカーテンに手を掛ける。
隙間からこぼれる朝のひかりに目を細めながら、ゆっくりとしたスピードでカーテンを引いていくと。


全体的に暗かった寝室が、あっという間にお日さまのひかりで充満していく。視覚的効果からか、部屋内がふんわりとやさしい香りを纏うから、つられるようにとろんと目元が緩んだ。


浴びせられる強い日差を、ひんやりとしたクーラーの冷風が包んでくれる。体感的には、とても快適だ。


ひとの睡眠リズムは日に入る光の刺激に左右されているから、太陽のひかり浴びると脳が自然と起きる準備を始める……だっけ?


以前、教えてもらったそれ。……だれに教えてもらったんだっけ、なんて、ぼうっと考えていたら。