nonsense magic




『きりくん、明日は10時くらいから朝ごはんの予定で、』

『たのしみ。アラームかけとく』

『…うん、ありがとう』


……なんとなく、それ通りにいかないんだろうな、とは思っていた。これから起こるであろうことを想像すると、微かにため息がこぼれる。 


よし、と気を引き締めるつもりで、髪をまとめていたクリップをもう一度ふかく差し込むと、エプロンをといてキッチンからくるりと背を向けた。


この場所からからきりくんが寝ている寝室は、真っ直ぐな廊下で繋がっている。
 


……おれはソファでいい、なんて言うきりくんに、ちゃんとベッドで寝てほしいとお願いをしたのだ。ソファで長い時間寝たりしたら、ぜったい身体が痛くなるから、って。

そこだけは譲らないわたしに、きりくんが渋々折れてくれたというか。



数日前のことを思い出しながら廊下を進むと、あっという間に木製のドアが目の前。
コンコン、控えめにノックをしてみても反応はない。


……まだ寝てるのか、それとも。



「きりくん、……はいるよ?」



そうして視界に映るのは、ベッドの背もたれに寄りかかったまま、微動だにもしない彼の姿。


いつもよりも下がった眉尻に、静かに閉じられた唇、涼しげに瞑られた瞳の上ではふわふわと睫毛が揺れている。


ほんとうにお人形さんみたい……って、何秒か見蕩れてしまうのは、もう日課みたいなもの。



「……やっぱり、」



すぐ横に設置されたサイドテーブルに置かれているにきりくんのスマホ。そっと覗いてみると、アラームはすでに解除されている。