上目がちに捉えながら呟けば、きりくんはなにかを悟ったように瞳を細めて、薄笑い。
ほんのりと色気を含んだその笑みに、どきりと心臓が跳ねる、裏側を伝う熱がひどく際立ったような気がした。
誤魔化すように外した視線も、すぐに涅色を纏うそれに囚われてしまう。
「、本気?」
頬が熱くなるのを感じながらもこくり、と頷けば、綺麗な指先が顎先にかけられて、そのまま軽く持ち上げられる。
「じゃあ、おれも本気にして言質取るけど」
あまく、艶やかな色香を含んだ声で、ゆったりと囁かれる。
…そのはずみに、ふわりとした柔らかい黒髪がわたしの頬を掠めるように揺れた。
擽ったさに目元をゆるめながら、スウェットを掴んでいる手にぎゅっと力をこめる。
「………また、きりくんにハグしても怒らない…?」
「おこんない。……こころの好きなだけしていーよ」
そんなに気に入った?というきりくんに素直にこくんと頷けば、また温度のこもっていない''かわいい''が返ってくるので、静かにスルーさせてもらった。
……かわいいの安売りは、よくないとおもう。
なんて、伝えてもたぶん流されてしまうだけなので、口には出さないでおく。
そろりときりくんに視線を運べば、妖しく細められた目元に視界を拘束されしまう。
…きりくんは、自分の雰囲気に引き込むのが、すごく上手い。
「撤回は受けないけど、……いい?」
耳元。柔らかな口調とは裏腹に、逆らうという手段ごと奪われてしまうような、…冷たい威圧感の滲む声に、背筋がぞくりと震えた。
…わたしには、頷くという選択肢以外ないらしい。静かに、ゆるやかに、戻れないと通告されている。



