nonsense magic




「きりくんも、?」


微かに震える声をかくすように下を向きながら、ぎゅ、とスウェットの裾をつまむ。

……わたしは、なんて答えてほしいんだろう。
もし''いっしょ''なんだとしても、どれだけ似た境遇でも、他人の感情を推し量ることはできない。


そう、頭ではわかっているのに、

────このひとなら、……なんて。
意味のわからない期待を抱いてしまう自分と、だんだんと速くなっていく心臓の音、じわりと濡れる目尻。



「ん、…いっしょ」


薄い膜で覆われたちいさな泡。
ぱちんと弾けるのは、一瞬だった。

静かに落とされたはずの声なのに、柔らかいひびきを纏って鼓膜へと届く。


「…泣いてんの、こころ」

「な、いて、……ないっ」


爪先でやさしく目尻にふれて、目元にかかっていた前髪を耳にかけてくれる。

……でも、まだ、泣いてないのに。


むっと眉を寄せて下からすくうように見上げたら、きりくんはふ、と微かに表情をゆるめたまま、甘やかすように髪をなでるから、スウェットを掴んだままの指先がぴくりと反応する。


「…ハグ、足りた?」

「ん…、こころすげー抱き心地いいから。離れらんなくて困るね」


抱き心地、……離せない?



「……まだ、離さないでほしい」