よかった……と、安堵を浮かべながら、昨夜のことを思い出す。
''こころの心配するようなことはない''、つまり、……無断外泊になっていないということ。
……そういえば、きりくんは一度目目を覚ましたあと、誰かと電話をしていた。
「(お家の方と連絡取ってたのかな……)」
そう考えれば辻褄が合う。
さすがに見ず知らずの他人の家にいる、なんて言いにくいだろうから、友達の家に泊まるとか……?
「おれもこころと一緒。ほとんど一人暮らしみたいなものだから」
そうひとりで納得しかけたとき。
きりくんの口からこぼされた予想外のセリフに、ぱっと顔を持ち上げる。
「…いっしょ…?」
どくどくっと、脈が速くなる
相変わらず読めない瞳と視線がかち合って、心臓が唸るように音を響かせた。
「生活感ないし、家の中は誰も住んでないみたいに静か。……外見だけは綺麗で」
「……うん、」
「……そんなの、何の意味もないし、いらねーの」
掠れた声の裏側に心音が混ざって、ぼんやりとした焦点が定まっていくように。
こぼされるセリフがパーツとなって、かちり、かちり、脆い音をたてながら、はまっていく。
────……わたしと、いっしょ、
「帰る場所はある、……けど」
「………」
「……帰りたいっておもえる場所は、ないの」
誘われるみたいに、ぽろぽろと落ちていく。



