簡単に引き戻されて、結局ぽすりときりくんの腕のなかに収まってしまう。
安心するぬくもりと、香り。
抗おうにも、拒否する要素が見つからなくて……。
どうしよう、と視線を泳がしていれば、ふと視界に入ったのはデジタル時計。
……一か八か、だ。
「……、もう12時だよ、」
「…それが?」
「きりくん、その、門限とか……」
「…ふ。門限が昼の12時とかある?」
「た、たしかに……」
そもそも、門限なんて昨夜この家に泊まった時点で破られているはずで……。
ということは、もしきりくんに門限があるなら……、この状況、だめなのでは?
すっかり頭から抜け落ちていた。
熱で倒れたきりくんを家に運びこんで、一時的に看病して、一晩泊めてしまった……けど。わたしの''勝手''で、きりくんのお家の方に心配をかけてしまっているかもしれない。
''きりくんのお家の方は大丈夫?''
────……瞬間
きりくんの昨夜の眼差しが浮かんで、咄嗟に口をつぐむ。
あの状況で病院を拒否したきりくん。
……なにか事情があるんだろうな、とは思っていたけれど。
でも、もし、''それ''がお家関係のものなのなら、安易に問いかけるのは失礼かな……。
「あー…こころが心配するような事はなんもないから」
「……ほんと?」
「ほんと。大丈夫」
わたしが考えていることは、すべてきりくんにお見通だったらしい。なだめるように背中を撫でられて、強ばっていた力が抜けていく。



