nonsense magic



「……一方的なハグは、失礼かな、と」


……ううん、こんなのは言い訳だ。
ほんとうは、─────だけ、


そうぽつりと呟けば、顔をあげた先にある涅色の瞳がゆらりと波打って、静かな黒に引き込まれる

…ほんとうに、綺麗な瞳《め》。



「……いーよ、もっとくっついてみる?」

「っこ、これでじゅうぶん……かな」

「こころが言ったんじゃん。
……''わたしがきりくんにハグしたかっただけ''って」

「…そう、だけど、」


自分でもはずかしいことを言ってしまった自覚は、ある。でも、それはなんというか、言葉のあやと言うか……。

…きりくんのこと、なめてるとかじゃなくて。自分以外のだれかの体温って、すごくあったかく感じて、''ひとりじゃない''っておもえるから。


すり、となかば無意識にきりくんの胸のあたりに頬を擦り寄せた。



「(きりくん手は冷たいのに、……腕のなかはあったかいなあ……)」
 

布越しに伝わる体温と、ふんわりと香る柔軟剤の匂い。それらに目元を緩ませていると、ふと髪を撫でていた手のひらが動きを止めた。


「気ぃ許しすぎじゃないですか?」

「……不可抗力…」

「さっきから微妙に言葉のチョイス違う」

「ハグに、絆された……?」


きょとんと首をかしげてみせると、きりくんはふ、って喉の奥を鳴らすように笑って、わたしの腰あたりにまわした腕の力をぎゅっと強める。



「……やっぱりぬくいね、こころ」

「うん。……あったかい」

「お子様体温、」

「…おこさまじゃない、よ」


口を窄めるわたしに、きりくんはおだやかに瞳を細めると、わたしの髪を指の隙間に通して、またくるくると毛先を絡ませる。