はっと意識を戻したのは、数秒後。
「……っ、」
瞬きを落とすひまもない、一瞬。
振り向き様にゆるい力で握られた両手首は、ソファに縫い付けられるように固定される。
「き、りく……?」
上半身だけがソファに寄りかかるような体勢。決して逸らすことを許されない瞳に、ただ見下ろされている。
「危機感死にすぎだろ」
「え……っと、なんで、っ!」
ぼそりと吐かれたセリフをうまく捉えられなくて、思わず聞き返した瞬間、────……びくん、と肩が揺れて。
手首を押さえていたきりくんの片方の手が、耳のあたりをの髪の毛をすくう。
……さっきまでとは、なにかが、明確にちがう。
どこが違うのか、そう聞かれたらうまく答えられない。
……でも、ほんの一瞬で、きりくんを纏う空気が変わった。
指先で髪を梳かすような仕草で、ゆっくりとふれられる。
ばくん、弾けるように高鳴るそれは、さっきまで感じていたものよりもずっと激しくて、じわりと生まれる熱に目が回る。
「……おれがこわい?」
伏し目がちに問いかけられたその言葉。
誤魔化すことは許さない、そう思ったから。
「す、こし、……こわい、」
でも、違うよ。
昨日男のひとに絡まれたときに感じた"恐怖"と、いまきりくんに抱いている“こわい"という感情は、まったくちがう方向を向いている、別物だ。



