nonsense magic




「し、失礼します……」


小さく呟きながらきりくんの額に手を当てると、昨日よりはだいぶ良くなったとは言え、まだ微かに熱を持っていた。


やっぱり一晩だけじゃあ、体調全快とはいかないらしい。



「微熱、かな。もうちょっと休んでた方がいいと思う」

「……おれ、まだここいていーの?」

「うん。……ちゃんと万全になるまで、休んでほしいです」


じっと上目がちにお願いすると、きりくんはすこし驚いたようなカオをしたあと、ありがと、ってゆるく口角をあげる。


「あと、敬語」

「……ごめんなさい。やっぱり慣れなくて」

「ふ、うそだよ。こころの敬語はなんか可愛いからいーわ」


「うん。ありが、……!?」


……かわいい、って。
そんな温度0のカオで言われても……。

だけど、不意打ちの''かわいい''を照れずにスルーできるほど、わたしに免疫があるわけでとなくて。


「……そういうの、言わなくていいよ」


きりくん病人なのに、そんな気を遣わなくていいよ。

そう付け足すと、なぜかきりくんは楽しそうに目尻を熔かすから、なに?と首を傾げると。


「おれ、お世辞とか言わないのになって」

「…………」


こんなにも信用できないセリフはない。
……それよりも、さっきからナチュラルに呼ばれる''こころ''の方に、変にどきどきしてしまう。



軽く細められる瞳とゆるく上がる口角、どれも様になる。

綺麗なカオ、なんて昨日から何回同じことをおもっているんだろう。



わたしが今まで出会ってきた男のひととは何か違う、ゆるくて掴めない人柄に、振り回されてしまう。