何秒か無言の時間のあと、こくん、とちいさく頷いたわたしに、きりくんは仄かに口角を緩ませてくちびるを重ねてくる。
───────『キスしたい』
一音一音を編むように、真っ直ぐに伝えられたのは初めてだった。すこしの戸惑いと恥じらいを孕むのに、不快じゃない。こころの柔らかい部分がやさしく押しつぶされるような、ぎゅう、と心臓が緩やかな圧がかけられているみたいな、不思議な感覚。
「っ、……ふ、っ、」
だんだんと深められる口付けに、息が上がっていく。
上顎を撫であげた舌先はすぐにわたしのものを捕まえて、先端をやわく絡めとると、頭の裏に回した手のひらにぎゅっと力をこめる。
舌の付け根まで、深く、自分のものを這わせて、そのまま口内の奥に埋められると、どうしても息が苦しくなってくる。ん、と、きりくんの真似っこのつもりで彼の舌を噛んでみれば、愉悦を孕んだ瞳が危うい光を灯す。
「(やっぱり、きりくんはキスがすきなんだ、)」
重なったそこから生まれる艶っぽい水音が鼓膜に届く度、頭の中がぼんやりと靄を纏っていく。
……でも、だめ。これ以上したら身体に力が入らなくなってしまう、と、やんわりときりくんの胸を押し返したのと同時、熱っぽい吐息が溶けていた口内に冷たい空気が触れたかと思うと、くちびるが離される。



