「きりくん、この服きらい?」
自然と眉が下がってしまう。きゅっとくちびるを噛みしめていたから、声のトーンも落ち込んだ。
……"かわいい"って、言ってくれたのに。
レースをなぞるきりくんの指先に向けていた瞳をそっと持ち上げれば、濡羽色のそれも微かに細められる。なんだか呆れているような表情を落とされて、なに、と形だけの言葉を作れば、もう片方の手で頬を抓られる。
─────きゅっと、よわい力で肌を撫ぜる人差し指と中指は、まだほんのり温かい。
「、……いた、い」
「うそつけ。そんな力入れてない」
「………!え、なに、っ」
突然縮められた顔同士の距離に後ずさろうとしたけれど、もう、とっくに追い込まれていた。思わず頭を扉にぶつけそうになったけれど、きりくんの手のひらは頭の裏に既に差し込まれていて、痛みはなかった。
『こころ』
……名前に続けてゆっくりと伝えられた"それ"。
やんわりとあまやかな形を纏って、鼓膜へと響く。
空気は震えていない、声になってもいない"それ"なのに、痛いくらいに心臓が震えて、トクトクと高鳴る。
一気に顔に熱が集まったのが分かって無意識に俯きそうになるけど、頭はしっかりと固定されている。後毛を撫でつける指先にも大げさに反応してしまう自分が恥ずかしいのに、逃げ場がない。



