「、……わ、わたしお風呂入ってくる」
……なんて。そう簡単に逃がしてくれるわけもなく、腰に回された両腕にぎゅっとホールドされてベッドから抜けられない。
「、ん、……!」
丸まった上半身を身体ぜんぶで覆われて、さっきよりも息が苦しい。せめてもの反抗にぽこぽこときりくんのお腹を叩いていると、あ、と気づく。
「っ、きりくんの服に化粧ついちゃうよ。それに汗も、」
……桜玖さんとなずなさんに見送られた帰り道。マンションのエントランスを抜けると、待ち構えるように停められていた黒塗りのタクシーから出てきたおじいさん、……『綾船様』と名前を呼ばれたかと思うと、あれよあれよとそのまま乗せられてしまい、気づいたら家に着いていた。
空調の効いた車内は、とても快適で心地よかった。運転手さんにありがとうございました、と頭を下げて、お金を払おうとお財布を取り出せば、にこりと穏やかに微笑まれて。
『既に頂いておりますよ。ではお気をつけて』
─────……ということがあって。
快適に帰宅できたから、汗は乾いていると思うけど、暑さでメイクはよれてるかもしれないし、お風呂も入れていないし、……とりあえず、だれかに触れてもらえるような状態ではないのは確か。



