「……あ、でも、今日はわたしも"ただいま"って言ってな、……っ、」
ふわりと瞼を掠めたのは、やわらかな猫っ毛。艶のある毛先が視界の隅っこに映り込むのと同時、こつん、と額に軽い振動が与えられた。
「……こころ」
「、なあに?」
「なんか、おまえ、ぜんぶちっさいね」
かけられた言葉に目を丸くするわたしとは対に、ふっ、と目元を緩ませたきりくんはおかしそうに口角をはねあげて、ぐりぐりと額を押しつけてくる。
……"おまえ"って言った。
「身長は、平均よりも高いほうだよ。手は、……ほかの人と比べたことがないから、わからないけど」
すると、重なる手のひらに視線を寄越したきりくんは、ぎゅっと力をこめてみたり、爪先で引っ掻いてみたり、好き放題だ。
「、たのしい?」
「うん。……ちっさくてあったかい」
なにそれ、と頬を緩めるわたしに、きりくんは今までで一番やさしい瞳をくれる。尖った目尻をうつくしく熔かして、あたたかい表情を向けてくれる。



