「、……"おかえり"って、きりくんがいつも言ってくれるでしょ」
明かりが灯った家、扉を開けた先は、ひとりじゃない。冷たくて空っぽな空間に慣れてしまっていたわたしには、きりくんがそこに居てくれること、『おかえり』ってちいさく笑ってくれることが、日々の些細なたのしみになった。
きりくんと過ごす日々は、わたしが忘れてしまった日常を思い出させてくれる。捨ててしまった記憶をやさしく手繰り寄せて、掬ってくれる。
それが、とても眩しくて、うれしい。
……だから、ひとりじゃないよ。
わたしの今にとってきりくんの存在がどれだけ大きいのかを、今の不安定なきりくんに知ってほしい、伝わってほしい。
その一心で、辿々しくもぜんぶを言葉にして伝えてみれば、再び静寂がこの場を支配する。
……ひ、ひかれた……?
遂に何の反応も返してくれなくなったきりくんに、どうしよう、と内心慌てながらも、とりあえず手を離して話題を変えようと、さっと視線を横に流せば。



