彼の感情を掬うことはできないのに、ゆるされないのに、中途半端に温度を共有してしまった唇が、あまりにも冷えているから、……触れ合っているのに、ひとりぼっちみたいな顔をするから。
「……きりくん、」
わたしの頬を包む彼の手のひらに自分のものを重ねて、冷えきったそれが少しでもあったかくなるように、肌の表面を指のはらで撫でる。
それを何度か繰り返せば、すり、と手のひらに擦り寄るみたいに指先を絡めとられて、さらに距離を詰められた。
「、お願い、もうひとつ、いい?」
ぎゅっと、包みこむように問いかける。
数秒後、音もなく頷いたきりくんの手のひらに触れたまま、"お願い"を口にした。
「……おかえりって、言ってほしい」
静寂が溶けた部屋に、わたしの声だけが響く。そのまま相手の反応を伺うように見つめていると、ずっとぼんやりとしていた真っ黒な虹彩が、ふ、と戸惑ったように揺らめいた。



