nonsense magic




後ろからきりくんの身体で挟まれて、視界を占めるのは黒に近い壁だけ。


半ば押しつけられるように壁に追いやられているこの体勢、……きりくんは離してくれないし、はずかしいし、やだ。



「きりくん、っ、おねがい、」


ハグするなら、後ろからじゃなくて、きりくんの顔が見えるようにしたい。
 


「いつもみたいに、ちゃんとハグして……」


ほんのりと潤んだ声で囁きながら、きゅっときりくんのスウェットを強く引く。動きを止めて無言を貫くきりくんに、もう一度きりくん、と呼びかければ、ぎゅっと掴まれていた腕の力がゆるめられる。



「……それはずるくない?」


ぽつりと落とされたそれは悩ましげで、でも、微かにやさしさの滲んだ声音。語尾がやわらかく掠れる声は、表情とか纏う雰囲気よりも、きりくんの感情が現れている気がする。



……よくわからないけど、きりくんのご機嫌、回復した。