「どこ行ってたの」
耳元に吹き込まれる声は不機嫌で、わたしの腕を掴む手のひらと同じ温度をしている。ひやり、先の尖ったカタチをした冷たさを突然向けられて、脳がうまく動かない。
唯一、ひとつ、理解できること。
……きりくん、怒ってる?
「、きりく、……っ、ひ、ゃ」
耳の裏に鼻先が当てられて、すん、と匂いを嗅がれる。皮膚が掠め合う擽ったさと、妙に熱の籠った吐息が空気に溶けあって、……せっかく落ち着いていたのに、ドクリ、脈があまく揺れてしまう。
……違う。まって、わたし今汗かいて……。
「っまって、ほんとう、………〜っ?」
すると、ちう、と頸に吸いつかれて、やわらかな唇の感触が濡れた肌を這う。表面をなぞるみたいに、きりくんの少し乾いた唇が気まぐれに落とされていく。
色々耐えられなくて、「やだ、っ」と首を振りながら後ろを振り返ろうとしても、とん、と廊下の壁に手のひらをついたきりくんに追い込まれて、なす術がない。
「……ふ。耳、あか」
揶揄うようにふっ、と息を吹きかけられると、大げさに肩を揺らしてしまう。じくりと不安定な熱が溜まっていく感覚に、眩暈がする。



