nonsense magic





「あやこ、紅茶飲める?」

「はい。っわ、いっぱい……!」


手を引かれるままソファーから降りると、真っ白なダイニングキッチンに案内してくれた桜玖さん。


隅々まで手入れの行き届いたキッチンは窓から反射するひかりを綺麗に纏っている。端っこに置かれた観葉植物も相まって、ほんとうにモデルルームみたい、とひそかな感動を浮かべながらも、収納棚に丁寧に並べられた"それ"に注目してしまう。



「ダージリン、アールグレイ、アッサム、セイロン、……ぁ、オレンジペコーまである………すごい……」

「へえ、詳しいな。紅茶好きなの?」


桜玖さんが気まぐれに手に取ったアンティーク調の缶、……の隅っこにちょこんと置かれた有名な老舗ブランドのロゴに気を取られながらも、こくんと頷いてみせる。



「前に習ってから、たまに家で淹れてみたりしてて……いつもストレートで飲んでたんですけど、この前、はじめてアッサムにミルクを入れてみたらすごく美味しくて、」


「アッサムは味も香りも濃いから、冷たいミルクと合わせて飲むとコクが深まってうまいよな〜おれも好き」



ダージリンは洋菓子に合う、とか、セイロンは癖がないから色んな飲み方ができるとか、レモンティーにするならニルギリが1番、……など。


ふわりと無邪気な空気を纏いながら、たのしそうに紅茶のことを話してくれる桜玖さんは、いつもの艶っぽい雰囲気とはまた違う眩しさで、思わず目を細めてしまった。