「……へえ、なずクンめずらし〜……」
「……………喉かわいた。さく、お茶」
「脈絡。5歳児かよ」
なぜか、なずなさんの方に倒れ込む桜玖さんを視界に捉えながらも、わたしの意識は一点に向いていた。
さわやかな甘さのなかに香る、花びらの匂い。繋がれた手を引き寄せて、すん、と空気を吸い込めば、鼻腔を微かに擽ったフローラルノートの香水に、やっぱり桜だ……!と頬をゆるめていれば、改めて体勢を向き直した桜玖さんと瞳が合わさる。
「桜の香水、すごくいい香り、」
「、……うん。昔から桜の香り好きなんだよね」
「そうなんですか?ふふ、わたしもすきです。優しい春の雰囲気とか、やわらかいけど、でも甘すぎない感じとか、」
意外な共通点に笑みを零してしまうわたしを、少し呆気に取られたような顔で見つめていた桜く桜玖さんは、向けていた眼差しから艶を透かすと、きゅっと目尻にシワをつくって、吹き出すように笑っていた。
「ん、おっけー……わかった」
「?」
「でた、あやこのハテナ攻撃」
こつ、と頭をつつかれて、そのまま髪を撫でられる。でも、この前されたときみたいに色気を含んだ仕草ではなくて、なんというか、……こう、飼い犬の頭を撫でる時みたいに、純粋で、無邪気な指先。
……このひとは、こんな表情もするんだ。



