nonsense magic




手触りのいい生地と微かに香ったあまい匂いに、やっぱり華やかなひとだな、なんてぼうっと上目で桜玖さんを見上げれば、彼はくすりと微笑んで。



「あやこ、きょうメイクしてる?」

「……はい。この前、学びました、」

「はは、何をだよ」

「綺麗なひとの傍に立つには、精一杯の努力が必要不可欠です……」



もう、同じ失敗は繰り返したくないのだ。
華やかで麗しい桜玖さん、……もし、一緒に外を歩く可能性があるなら。


わたしは目一杯おしゃれをして、すこしでもマトモな姿でいなければ、桜玖さんに恥をかかせてしまうかもしれない。



「へえ。俺、あやこみたいな考え方すき」

「……そうですか?」

「うん」



でも、と、不自然なところでセリフが途切れたら、ぴとりと頬に手のひらが添えられる。仄かに生ぬるい温度が肌にあてられて、反射的にびくりと肩を揺らせば、わたしを見下ろす桃花眼がゆるりと細まる。



「あやこはじゅーぶん、綺麗じゃん?」


たっぷりの色気を孕んだ、艶っぽい笑み。爪先が肌の表面を掠めるようになぞったのと同時、痺れるようなあまさを含んだ声で囁かれる。
 


――――……やっぱり、似てる。
ほんとうに、おそろしいくらい、綺麗に笑うひとたちだ。