7月下旬、湿っぽい夏の夜
夏特有の湿った風はあまり好きではないから、ほんとうに、なんとなく。
22時。
家から徒歩10分のコンビニに、そんな軽い気持ちで訪れるべきではなかった。
「だーかーらー。オネーサン、歳いくつ~~?」
「…あ、の、わたしもう帰るので」
「ええ、もうちょっと居てよ。つーか、今からあそびに行かね?」
微かに香るお酒の匂い、控えめに視線を合わせてみれば、定まらないゆらゆらと揺れている瞳とぶつかって。
にやり、口端をあげられる。
「店の前だと目立つし、人すくないとこ行こっか」
「っ、や……!はなして、ください」
「うわあ、肌スベスベ。オネーさん大人っぽいしモテるっしょ?」
こんなときに褒められても、嬉しくなるわけがない。
指の腹で肌の表面をなぞるように触られて、ぞくっと冷たい感覚が背中を走る。
たまたま目が合ったコンビニの店員さんに、助けて、と瞳で訴えかけても、気まずそうに逸らされてしまう
わたしの腕を掴んでいる男のひとは、明るい茶髪に無数のピアス、よく見ると口のなかにも穴が空いている。
いたそう……なんて、ひとの心配をしている余裕なんて、いまのわたしにはないのに。



