貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜

いつもよりもずっと低い声で名前を呼ばれたことにハッとする。
急に意識がクリアになっていくような気がした。
ディアンヌはカッと目を開いて声をする方に視線を向けた。
シルバーグレーの髪は乱れており、長い前髪の隙間から覗く端正な顔立ち。
ロイヤルブルーの瞳は眠たげで、シャツの隙間から見える肌と相俟ってとても色っぽい。
目の前には固い胸板があり、ディアンヌの手足はリュドヴィックの体にピタリと絡まっている。

そして昨日、一緒に寝ていたことをぼんやりと思い出してディアンヌは悲鳴が出そうになるのを押さえていた。
自分の行動がありえないものだと気がついて、気が動転してしまう。
だが、ディアンヌはあまりにもパニックになりすぎて、気づいたら普通に挨拶をしていた。


「お、おはようございます」

「……おはよう」


ディアンヌは体を少しずつ少しずつ離していく。
そしてコロコロと転がりつつ、何事もなかったようにベッドから起き上がる。
腕を上げてストレッチをしながら、必死に誤魔化していた。


「リッ、リュドヴィック様、いい朝ですね!」

「……ああ」


リュドヴィックの反応が怖くて振り向くことができない。
そんな時、扉をノックする音が聞こえた。
マリアが「昨晩は申し訳ございません」と、言いながら部屋の中へ入ってくる。
二人の間に流れる固い空気を察したのだろう。