それから一年が過ぎ、弟たちもこの人魔界に馴染んできた。

 あれだけ酷かった天候災害もおさまり、各町や村、緑あふれ実りの多い場所になった。
 多くの町には子供が読み書きや計算を教わる学校が出来て、弟たちもそこで学んでいる。
 人魔界は、人も魔族も住みよい世界になった。

 そして──。

「ゼノン、とってもカッコいいです……!!」
「千奈も、とてもきれいだ」

 純白のドレスが、開け放たれたテラスの窓から入る風に揺れる。
 微笑み合う私たちの目の前には、大司教と、結婚証明書。
 それに金の印璽。

 外には大勢の国民。
 人と魔族、皆が私たちを祝福しに集まってくれた。

「これで、お二人の結婚を承認いたします。陛下、印璽を」
 大司教が促すと、その赤い瞳が私をとらえた。

「後悔はないか?」
「あったらここにいませんよ」
 私の可愛くない答えに頬を緩め、印璽を手にしたゼノン。

 そして書類に、印璽が押された──。

「これからもよろしくたのむ。鬼嫁殿」
「こちらこそよろしくお願いします。魔王殿」

 再び夫となったゼノンの唇が、私のそれに重なる。

 少し照れくさそうに微笑んだゼノンのずっと後ろの方で、碧眼の女性が優しく微笑んだ。そんな気がした。


 END