そういや、と思い出し、千穂に連絡する。
学校に無断欠席はさすがにおかしいので、千穂に
『しばらく、長期休暇願う。熱出た』
と言って連絡しておいた。
千穂に『何か買ってこようか?』と言われたが
『お父さんが買ってきてくれた』といった。
ここは人通りも少なく、目立てちやすいので、走りながら連絡した。
遠く離れるために駅に向かう。
この村の良いところは、アクセスぐらいだと思う。
自分の家からも駅が近いので歩いていける距離だ。
もうすぐ電車が来るので改札口に入りかけたとき。
声が聞こえた。
「向葵っ!!」
……なんで?
「千穂……。どうしたの?」
怪しまれないように普通に話す。
「向葵こそ…どうしたの?何かあった?」
「なんで?何もないよ。」
「何もないの?そんな荷物持って。さっきも『熱出た』って言ってたのに。」
痛いところを突いてくる。
「……ごめん。見逃して」
隠すことはできないと確信した私は、千穂にそう言った。
「…向葵ってさ、私に…何か隠しているよね。」
「………」
何も言わない私に、千穂は言った。
「………私…さ、その隠しごと…知ってたんだ。」
え?
「でも、向葵の口から聞きたかったから……黙ってた。ごめんなさい。」
千穂は頭を下げた。どうして謝ってるの?
「千穂が…謝ることじゃないよ」
「…うん。ありがと。………幼馴染だからって全部話して、なんて思ってなかったんだ。
けど毎日、向葵が苦しそうに顔をゆがめるときがあるの。それに私気づいてたのに、何もできなかった。
私ね、ちょっとくらい向葵に頼ってもらいたかった。」
千穂のつらそうな声が聞こえた。
………やめてよ。顔を上げてよ
「もう………大丈夫だよ。もう…」
「私は!この村で一番向葵こと分かってるつもりだった。」
私の言葉をさえぎっても、千穂はしゃべり続けた。
「そんな私が向葵のこと、救うことできなかった。」
「千穂、私のために、自分を責めないで。
私は、今日すっごく楽しかったよ。
ずっとここの空間に居たいと思ったよ。ありがとう。
でもね、私は自分でこの決断を下したの。だから……」
「じゃあ、私もついて行く。」
「………え?」
「私も、一緒に村を出る」
「なんで…そこまで…」
「私は向葵に助けてもらってばかりだった。だから、今度は私が助けたい」
「……ありがとう。けど私は一人で村を出ないと意味がないんだ。だからごめんね。」
「…わかった。」
ずっと、下を向いていた千穂が顔を上げた。
その顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
けど、その顔はすべてを決意したかのように凛としていた。
「私に、出来ることがあったら連絡して。」
「うん。」
「学校は私が何とかするから」
「うん。ありがとう……千穂。」
しばらく沈黙が続いた後、私たちは口をそろえて言った。
〖じゃあ、ばいばい。〗
二人、並んで歩くことはもうやってこないかもしれない。
私たちは前を向き歩き始める。
ばいばい。
嫌いな瞬間なんて一度もなかった。
頼ってくれた時はうれしかった。
ずっとそばに居てくれて楽しかった。
二人で泣いたときも、笑ったときも、喧嘩したときも、最後は笑って終わっちゃう。
そうやって二人一緒に過ごしてきた。
ずっと一緒に居たいと思った最初の人。
まだ始まったばかりの、最初の旅での別れ。
学校に無断欠席はさすがにおかしいので、千穂に
『しばらく、長期休暇願う。熱出た』
と言って連絡しておいた。
千穂に『何か買ってこようか?』と言われたが
『お父さんが買ってきてくれた』といった。
ここは人通りも少なく、目立てちやすいので、走りながら連絡した。
遠く離れるために駅に向かう。
この村の良いところは、アクセスぐらいだと思う。
自分の家からも駅が近いので歩いていける距離だ。
もうすぐ電車が来るので改札口に入りかけたとき。
声が聞こえた。
「向葵っ!!」
……なんで?
「千穂……。どうしたの?」
怪しまれないように普通に話す。
「向葵こそ…どうしたの?何かあった?」
「なんで?何もないよ。」
「何もないの?そんな荷物持って。さっきも『熱出た』って言ってたのに。」
痛いところを突いてくる。
「……ごめん。見逃して」
隠すことはできないと確信した私は、千穂にそう言った。
「…向葵ってさ、私に…何か隠しているよね。」
「………」
何も言わない私に、千穂は言った。
「………私…さ、その隠しごと…知ってたんだ。」
え?
「でも、向葵の口から聞きたかったから……黙ってた。ごめんなさい。」
千穂は頭を下げた。どうして謝ってるの?
「千穂が…謝ることじゃないよ」
「…うん。ありがと。………幼馴染だからって全部話して、なんて思ってなかったんだ。
けど毎日、向葵が苦しそうに顔をゆがめるときがあるの。それに私気づいてたのに、何もできなかった。
私ね、ちょっとくらい向葵に頼ってもらいたかった。」
千穂のつらそうな声が聞こえた。
………やめてよ。顔を上げてよ
「もう………大丈夫だよ。もう…」
「私は!この村で一番向葵こと分かってるつもりだった。」
私の言葉をさえぎっても、千穂はしゃべり続けた。
「そんな私が向葵のこと、救うことできなかった。」
「千穂、私のために、自分を責めないで。
私は、今日すっごく楽しかったよ。
ずっとここの空間に居たいと思ったよ。ありがとう。
でもね、私は自分でこの決断を下したの。だから……」
「じゃあ、私もついて行く。」
「………え?」
「私も、一緒に村を出る」
「なんで…そこまで…」
「私は向葵に助けてもらってばかりだった。だから、今度は私が助けたい」
「……ありがとう。けど私は一人で村を出ないと意味がないんだ。だからごめんね。」
「…わかった。」
ずっと、下を向いていた千穂が顔を上げた。
その顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
けど、その顔はすべてを決意したかのように凛としていた。
「私に、出来ることがあったら連絡して。」
「うん。」
「学校は私が何とかするから」
「うん。ありがとう……千穂。」
しばらく沈黙が続いた後、私たちは口をそろえて言った。
〖じゃあ、ばいばい。〗
二人、並んで歩くことはもうやってこないかもしれない。
私たちは前を向き歩き始める。
ばいばい。
嫌いな瞬間なんて一度もなかった。
頼ってくれた時はうれしかった。
ずっとそばに居てくれて楽しかった。
二人で泣いたときも、笑ったときも、喧嘩したときも、最後は笑って終わっちゃう。
そうやって二人一緒に過ごしてきた。
ずっと一緒に居たいと思った最初の人。
まだ始まったばかりの、最初の旅での別れ。

