「そういえばさ、気になってたんだけど、その左手に付けてるやつ何?」
岡部さんはそう言うと、わたしの左手首を指差した。
「あぁ、、、」
わたしはクロキさんから預かっている時計らしきものを、ずっと付けたままにしているのだ。
「時計、、、ではないよね?数字も書いてないし。見たことない特殊な腕輪か何かかい?」
そう言うと、岡部さんはガハハハと豪快に笑った。
「わたしの大切なものなんですけど、、、外した方がいいですか?」
恐る恐るわたしがそう訊くと、岡部さんは「別に付けたままでも構わないよ!花に影響なければ、何の問題もないさ!」そう言って、親指を立てて見せた。
「ありがとうございます。」
わたしが頭を下げお礼を言うと、岡部さんはわたしの肩にボンッと手を置き「今まで何があったかは知らないけど、あんたは謙虚すぎるよ!もっと笑いな!あんた、笑ったらもっと可愛くなるよ!元が美人さんだからね!」と言い、また豪快に笑った。
わたしは岡部さんの優しさに涙が溢れてきた。
そして「ありがとうございます。」と再び頭を下げたのだ。
「何だよ、泣き虫だねぇ!ほれ!涙拭きなさい!」
そう言って、岡部さんはエプロンからハンカチを取り出し、わたしに差し出した。
わたしは「ありがとうございます。」とハンカチを受け取ると、涙を拭いた。
「桐屋さん、さっきからありがとうございます、しか言ってないよ!」
岡部さんはそう言って笑い、つられてわたしまで笑顔になった。
こんなに人の優しさに触れられたのは、久しぶりな気がした。
そして、わたしはクロキさんの優しさ、温かさを思い出していた。



