わたしは退職届の書類を貰ったその日のうちに退職届を提出すると、すぐに退職した。
ここの会社は、無断欠勤のまま結局退職する人が多く、会社の名前だけ聞けば大企業だが、それだけブラックな会社だということが分かる。
わたしが退職届を提出し、退勤しようとすると、後ろから「あら〜、桐屋さん。」とわたしの苦手な声が聞こえてきた。
振り返ると、そこには深澤さんが立っていた。
「桐屋さん、退職するんだって?いいわよね〜、仕事がなくて簡単に退職できる部署の人は。わたしなんて、仕事が山積みで退職なんてさせてもらえる状態じゃないのよ〜?桐屋さんが羨ましいわ〜。」
深澤さんは「ざまあみろ」とでもいうような不敵な笑みを浮かべてそう言った。
わたしは深澤さんの言葉にイラッとしたものの、それ以上は何も感じなかった。
「長い間、お世話になりました。深澤さんは、いいですよね。山積みの仕事は下の人たちに押し付けて、課長や主任たちに色目を使って、手は動かさずに口ばかり動かしてお給料いただけているんですもんね。羨ましいです。」
わたしがそう言うと、深澤さんは顔を真っ赤にし、今にも噴火するんじゃないかというような顔で目をつり上がらせていた。
それからわたしは冷静に「それでは、失礼します。」と言い一礼すると、深澤さんに背を向け、家路についた。
最後に言いたいことを言えてスッキリしている自分がいた。



