「生きること」


「くる実、クロキにあの秘密の場所を教えてもらったことはあるかい?」
クロダさんは、こちらを振り向かず闇人間を直視したままそう言った。

「秘密の場所」と聞き、わたしの頭の中に浮かんだのは、クロキさんに連れて行ってもらった大きな満月が見える場所だった。

わたしが「はい。」と答えると、わたしの横で「何?秘密の場所って、何?」と一人理解出来ず、戸惑っている敬ちゃんがクロダさんとわたしを交互に見た。

「あの場所には、もう行くんじゃないよ。もう満月は砕けて、闇だらけになってるはずだ。もう安全な場所はない。」
クロダさんはそう言うと、「さあ、逃げなさい。森の奥を目指すんだよ。」と言って、闇人間に向かって歩き出した。

「クロダさん!」
「クロダのばあちゃん!一人じゃ無理だよ!」
わたしと敬ちゃんが止めようとすると、クロダさんは一度立ち止まり、こちらを振り向いた。

「ワシを誰だと思ってるんだい。あんな闇人間くらい一人で平気さ。」
クロダさんは優しくそう言ったあと、強い口調で「さぁ!早く!逃げなさい!」と言い、そして「生きるんだよ。」と言い残し、闇人間に向かって再び歩き出した。

わたしはクロダさんを止めようと、クロダさんに向かって手を伸ばした。
しかし、敬ちゃんに阻止され、「くる実ちゃん逃げよう!」と言われた。

「でも!」
「クロダのばあちゃんの力はさっき見ただろ?きっと大丈夫だよ。」
敬ちゃんはそう言うと、わたしの手を引き、森の中へと走り出した。