「生きること」


「ねぇ、クロダのばあちゃん、瞬間移動とか出来ないの?またさっきみたいにたくさんの奴らが追いかけて来るかもしれないよ?」
敬ちゃんがそう言うと、クロダさんは振り向きもせず「ワシは死神を引退した身だ。そんなこと出来ん。」と言った。

「じゃあ、くる実ちゃんだけ現実世界に戻せばいいじゃない!俺も付き添いで一緒に戻るよ!」

敬ちゃんの言葉にクロダさんは立ち止まると、くるりとこちらを向いた。

「そんなことが出来るなら、とっくに現実世界に避難させてるよ。でも、敬介は戻せても、くる実を戻すことが出来ないんだよ。」

苛ついているようにクロダさんはそう言うと、眉間にシワを寄せ、敬ちゃんを睨んだ。
敬ちゃんは、「ですよねぇ、、、」と言いながら、余計なこと言っちまったとでも言うような表情で笑って誤魔化していた。

「舞は、もう人間の形をしていない。憎しみや嫉妬、色んな感情が混ざり合って黒い塊になっている。」
「「え、人間の形をしていない、、、?」」

クロダさんの言葉に驚き、わたしと敬ちゃんの声がハモった。
クロダさんは目を閉じ、「あそこまでいくと、厄介なのさ。」と言い、話を続けた。

「くる実を守るなら、現実世界に戻すのが一番さ。でも、舞があぁなった一番の原因は、クロキに気に入られたくる実への嫉妬。黒い塊にまでなってしまうと、闇の力がついて、執着した相手を現実世界に戻せなくすることが出来るのさ。」
クロダさんがそう言うと、「だから、俺は戻せても、くる実ちゃんは戻せないのかぁ。」と敬ちゃんは納得するように言った。

「クロキさんは大丈夫なんですか?他に助けてくれる死神は居ないんですか?クロキさん一人じゃ、、、」

わたしの言葉にクロダさんは、ゆっくりと首を横に振った。

「ここに居る死神は、クロキしか居ない。クロキ一人でどうにかしないといけないんだよ。」
「そんなぁ、、、」
「死神の仕事はなかなかキツイ。だから、ワシを含めても引退する死神は多い。引退してしまえば、住宅街のアパートの管理だけが仕事になる。他に何があっても手出しをしようとはしないよ。」

それを聞き、冷たい、、、そう思ったが、これが現実。仕方ないことなのかもしれない。
それだけ、クロキさんやっている死神の仕事はかなり厳しいんだろうなぁ、と思った。