「生きること」


クロキさんはわたしを一度ギュッと強く抱き締めたあとでそっと離すと、「くる実さん、クロダさんのところに避難していてください。クロダさんは死神を引退して、それほど力は残っていませんが、厄介な人たちを現実世界に戻すくらいの力なら残っていると思います。」と強い口調で言った。

「何が起こっているんですか?!」
突然で怯えるわたしにクロキさんは優しく微笑み「大丈夫ですよ。」と言った。

「クロダさんのところまで送りますから、絶対にクロダさんのところを離れないでくださいね。」
クロキさんはそう言うと、わたしを抱き締め、瞬間移動した。

そして、着いた場所はクロダさんが居る窓口前だった。

「あんた、大変なことなってるよ。」
いつも無表情のクロダさんが険しい表情をして、窓口からクロキさんに向かって言った。

クロキさんは窓口の中まで入ると、わたしをクロダさんの側まで連れて行き、「くる実さんをお願いします。」とクロダさんに向かって言った。

そして、わたしに向かうと「くる実さん、絶対に約束は守ります。」と力強くも優しい声でクロキさんは言った。

「クロキさん、、、大丈夫ですか?」
わたしはクロキさんが心配なのと、何が起こっているのかが分からない不安で声が震えた。

クロキさんは「大丈夫です。くる実さん、、、待っていてくださいね。」と言うと、わたしに笑顔を見せたあとスッと消えてしまった。

わたしはクロキさんが消えてしまい、一気に不安が増した。

すると、クロダさんはわたしの不安を察したかのように冷静に「大丈夫だよ。」と言った。

「あの子は大丈夫。守りたい者の為なら、何だってやるさ。あんた、あのクロキを惚れさせる程、良い女なんだね。」
クロダさんはそう言うと、ハッハッハッと笑った。

いつも無表情のクロダさんの笑い声を初めて聞いた。

そして「でもねぇ、あんたを守りたい男は一人だけじゃないんだよ。」と言ったあと、クロダさんは複雑な表情を浮かべ、わたしを見上げた。