「僕は、くる実さんを好きになってしまいました。死神に好意を持たれても嬉しくないですよね。」
クロキさんがそう言って苦笑いを浮かべたあと、わたしは「そんなことないです!」と否定したが、クロキさんは納得していないように首を横に振った。
「僕が許せないんです。死神が人間を好きになるなんてあってはならないことですし、くる実さんにも失礼だと思っています。それにこのままでは、くる実さんを危ない目に遭わせ続けることになってしまいます。」
クロキさんの「危ない目」という言葉に舞さんの顔が浮かんだ。
確かに舞さんは厄介な人だが、わたしが思っている以上に何か問題があるのかもしれない。
「だから、くる実さん。生き続けてください。くる実さんは、迷惑な存在なんかじゃないです。僕にとって、必要な存在なんです。」
クロキさんは、そう言うと照れ笑いを浮かべ、それから「現実世界で待っててくれませんか?」と言った。
わたしはクロキさんの言葉が嬉しかった反面、少し現実世界に戻る抵抗があった。
また、深澤さんに嫌がらせをされ、書類管理部に異動させられる、、、。
やはり、思い出すと気持ちが沈む自分がいた。
しかし、わたしはクロキさんの気持ちに応えたかった。
会社は、あの場所だけじゃない。
それなら転職すればいいじゃないか!
わたしは気持ちを切り替えると、クロキさんの顔を真っ直ぐ見て「わかりました。待ってます。」と答えた。
クロキさんは笑顔になり、「ありがとうございます。」と言って、再びわたしを抱き締めた。
すると、突然地面が大きく揺れた。
驚くわたしをクロキさんは、強く抱き締めてくれた。
そして、満月の方に目をやると、あの綺麗な真ん丸い満月が欠け始めていたのだ。
それを見たクロキさんは「遅かったか。」と、悔しそうな表情を浮かべていた。



