ベランダ越しに花束を


光琉は安心したようにそう言って、空に目を向けた。

私も空を見る。

今日も雲ひとつない青天井。

光琉は長いまつ毛をなびかせながら目を閉じた。

私も目を閉じると、微かにする爽やかで気持ちのいい風が優しく吹き付けた。

いつもならうるさいはずの蝉の声も耳に心地いい。

光琉といるときは、暑すぎる夏でも、雨でも曇りでも、こんなに綺麗で、素敵な世界だと思える。

目をゆっくりと開けると、光が差し込んだ。

ちらっと横を見ると、光琉がこちらを見つめていた。

「なに?」

私は首を傾げて尋ねる。

「いや、別に…」

そう言い、光琉はそっぽを向いた。

なんだろうと思ったが、聞かないことにした。