ベランダ越しに花束を

「生きたくても、生きれない人だって、いっぱいいるんだ。別に、絶対に生きろとは言ってない。でも、そういう人たちがいることを忘れないで欲しい」

そう言った彼は、切ない顔で、どこか遠くを見据えていた気がした。

まるで自分がその立場にいるかのように。

生きたくても、生きれない人がいる。

そんなこと、考えたこともなかった。

自分のことしか考えてなくて、そんな自分に嫌気がさした。

光琉は、全く知らない人のことまで考えているのだ。

「光琉は凄いね」

つい、ポロリと口から本音が出た。

光琉は「え?ありがと」と困ったように、優しく笑っただけだった。