ベランダ越しに花束を


「でもさ、生きる理由、分かんなくなっちゃった」

私は光琉に視線を戻す。

光琉は空を見たまま、言った。

「そんなの、誰にもわかんないよ。だから、生きる理由を探す。それが人生じゃねーの?」

光琉はそう言い、にぱっと微笑んだ。

私は、光琉の言葉に、胸を刺された感覚になった。

生きる理由を、探すために生きている。

彼が言った言葉が、耳から、頭から、離れなかった。

「…ありがと」

私は、思いっきりの笑顔を見せた。

光琉も「何もしてねーけどな」と照れたようにして笑った。

「話、聞いてくれてありがと」

「全然。いつでも相談のるよ」

「うん、ありがと。じゃあ」

「またな」

ひらりと手を振り合い、私は中へ入った。

そのときの私は、歩く度に、まるで花が咲くような気分だった。