ベランダ越しに花束を

私はただひたすら無心で教室まで歩いた。

何も考えたくなかった。

何か一つ思い出したら、泣いてしまうような気がして。

教室に入り、顔を俯かせながら席に座り、机から教科書やノートやを出した。

すると先生に、「あ、山本。何してたんだ?」と言われ、全員が私を注目した。

その中にはニヤニヤと笑っている女子がちらほら居た。

私は少し顔を上げて「…お腹が痛くて、トイレにいました」と、蚊の鳴くような声で呟いた。