ベランダ越しに花束を

知り合いじゃないの?と思っただろう。
私は彼を知らないし、顔すら見たことない。
あちらが勝手に話しかけてきたのだ。

彼は、「あれ?言ってなかったっけ?」とヘラヘラ笑ってから言った。

「緑山 光琉。多分お前と同い年」

「へー」

私は光琉とは視線を合わせず、夜の街を見下ろす。
その光琉は、眉をひそめた。

「…は?お前の名前は教えてくれないの?」

私は「あー」と思い出したようにして言った。

「山本 舞花」

すると、光琉はウキウキな声音で聞いてきた。

「漢字は?どうやって書くの?」

「舞うに花で舞花」

こんなの知って何になるんだろう。
そう思っていると、急に光琉の目が輝き出した。

「え、何?」

私は怪訝そうに聞く。
光琉はにっこり笑って言った。