ベランダ越しに花束を

私は勇気を振り絞って、「光琉」と声をかける。

光琉は「んー?」と、まだ小刻みに体を震わせながら、あの笑顔で返事をした。

私は一瞬口が固まった。が、無理やり口を押し開けた。

「あのさ、」

洗濯を干す手を止め、カゴに入っている服をギュッと握りしめて言う。

「私、前光琉の家に入ったときさ、」

「うん」

さっきは首だけこちらに向けていた光琉が、今は体ごと私に向いている。

そのキラキラと輝く目の中に溺れそうなほど苦しい感覚に陥った。