ベランダ越しに花束を

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「じゃあ、家事よろしくね」
「うん」
「勉強もするのよ。ただでさえ遅れてるんだから」
「毎日してるから大丈夫だってば」
「はいはい。行ってきます」
「…行ってらっしゃい」

バタンっと玄関のドアが閉まる。
はぁーと私は重いため息をついた。
母という立場の人は毎日毎日同じことを言っている。
耳にタコができるとはこういうことか。

そんなことを考えていると、ピーピーっと洗濯機が洗濯を終えたことを知らせる音が聞こえた。
洗濯機の蓋を開けると、フワッと柔軟剤のいい香りがした。

私は洗濯カゴに洗濯された服や靴下やを入れて、ベランダに向かう。
そして毎回、窓ガラスに写った醜い自分を見せつけられる。

天然パーマでボサボサの髪の毛、痩せすぎている顔、離れた一重の目。
見ているだけで吐きそうだ。
そんな自分を見ていられず、窓を素早く開けてベランダに出る。