清澤君の言葉に私は笑顔で頷いた。
「いいね!ちょうど小腹が空いたなって思ってた」
斜め前に見えるコンビニに向かって歩き出す。
雨は弱まってきたから、もう傘はささなくて良い気もするけど、もう少しこの距離で歩いていたくて何も言わなかった。
「俺、からあげたべようかなぁ」
「私は…何か甘いもの食べたいな」
毎週木曜日、こんな風に帰れるんだ…
そう思うと、恥ずかしさも少しあるけど、それ以上に嬉しさで胸がいっぱいになった。
「甘崎は、どこの駅が家からの最寄?」
「あ、えっとね、私の家の最寄はー」
さっきまでのぎこちない会話が嘘のように、するすると言葉が出てくる。
もうほとんど降っていないも同然の雨と、キラキラとしたお日様の光。
その下で、ずっと傘をさしながら私たちは歩いていく。
キラキラ、カラカラ、とした白い魔法が降り注ぐみたいに。
……
…………
………清澤君の少し開いたリュックの中から、折り畳み傘が見えたのは、もう少し歩いてからのことだった。


