金平糖の白いまほう



 トッ、トッ、トッ、トッ…



 傘に打ち付ける雨の音だけが、私たちの間に響く。




 でも、その音は徐々に和らいでいき、目の前が少しずつ明るくなってきた。




 「おー!お天気雨になった!」



 清澤(せいざわ)君が嬉しそうに言う。



 さっきまで傘に強く打ち付けていた雨は、そっと傘に座るかのような優しい音になっていて、灰色の雲に覆われていた空は、青と白の光で輝いていた。




 「ほんとだ!…お天気雨好きなの?」


 「うん!だってあんまり見ないじゃん?特別感あって好きなんだよなぁ」


 笑顔でそう言う清澤君の横顔をチラッと見る。


 つられて私の頬も緩んだ。



 「分かる。私も…すき」



 傘を後ろに傾けて、空を見上げる。


 優しい雨の音と、あたたかい日の光が私たちに降り注いでいた。




 ふいに、


 キラキラ…カラカラ…


 という音が耳の奥で聞こえた気がして、白くて甘い匂いが胸いっぱいに広がった。



 (ありがとう、白い金平糖…)



 心の中でそっと呟く。


 「なあ甘崎、少し暇?お腹空かね?あそこのコンビニでなんか買わん?」