さようなら

「美味しかったわね」


私たちはお蕎麦を食べ終えた。


みんな満足そうな表情をしていた。


そんな中、母が店員の女性に

話し掛けた。



「あの… すみません」


「はい」


店員さんは笑顔で席に来た。


「あの… こちらに達也さんと言う

若い男性はいますでしょうか…」


「達也くん? 働いてますけど…


お知り合いの方ですか?」


「いや… 直接ご本人とは

知り合いではないのですが、

達也さんのご両親とちょっと…」


「そうですか、今、本人を

呼んできますので」


「恐れ入ります…」



私は何故か少しドキドキしていた。


何故、ドキドキなんか

しているんだろう…



少しして、達也さんらしき人が

現れた。


身長175㎝くらいの細身で、

髪は短髪、目は切れ長。


一見、少し恐そうな人に見える。


「あの… 私に何か…」


「達也さん… ですか?」

「はい…」


達也さんは少し不安そうな

表情をした。


「私は桜井といいます。


急に申し訳ありません。


実は昨日、あたのお父様が

運転するタクシーに

乗ったんですよ。


それでお父様から、息子さんが

こちらでお仕事をしていると

聞きまして…」


「わざわざ鎌倉まで?」


「いえ、実家がこっちなんですよ。


それでたまたま実家に来る用事が

あったので、それならこちらの

お店に来てみようと思いまして」


「そう… ですか…」



達也さんは顔を床に向けた。


「あの… 親父… いや、


父は元気でしたか?」


達也さんは床を見たまま

母に聞いた。


「元気だったわよ。すごくね。


明るくて、とてもいい方だわ」


心配したのか、店主らしき

人が現れて、レジで辺りで

母と達也さんの話しをこっそりと

聞いているようだった。