さようなら

私たちはお店に入った。


「いらっしゃいませ」


母と同じくらいの、

優しそうな女性の店員さんが

迎えてくれた。



「何名様ですか?」


「7人です」


「今用意しますので、

少々お待ちください」



店員さんは4人席を繋げた。


「どうぞこちらへ」


私たちは席に着き、注文をした。



「はぁ、お茶が美味しいわ」


おばあさんがホッとした

表情をした。


母は笑顔でお店の中を

見渡していた。


「落ち着く店ね…」


建物は木造で出来ていて、

木の質感がとても優しく

落ち着く雰囲気を作り出していた。



「それにしても、こんなに

分かりづらい場所に

作らなくてもね…


お客さん、一人もいないし…」


美紀ちゃんが言った。



「確かにね。

本当に美味しいのかしら…」


おばさんは少し不安な

表情をした。


「ねぇ、百合子、タクシー運転手の

息子さんがいるか

聞かなくていいの?」


「食べてからでいいわ」



暫くしてお蕎麦が運ばれてきた。


私たちは思わず「わぁ」と

驚いてしまった。


お蕎麦が盛られている食器が

お盆以外は全てガラス食器を

使用していた。


その綺麗さにみんな驚いて

しまった。



「ガラス食器を使ってるなんて、

初めてだな」


「本当よね」


祖父母も嬉しそうな表情を

している。


「それじゃあ、頂きましょうか。


百合子から食べてみて」


「うん…」



母はゆっくりとお蕎麦を取り、

ゆっくりとお蕎麦を啜った。



「お、美味しい…」


母は驚いた表情をした。


私たちもお蕎麦を食べた。


みんな「美味しい」と

同時に言った。


不安そうな表情をしていた

おばさんも、笑顔で食べていた。


お蕎麦はすごく優しい味がした。


作っている人の優しさが

伝わってくるようだった。