さようなら

「百合子、そのお蕎麦さんが

どうかしたの？


知り合いがやってるとか？」


「知り合いというか…」



母は今朝のタクシー運転手さんの

事を話した。


母は何故か、その話しを嬉しそうに

していた。


そんな嬉しそうな母を

みんなが見ていた。




「へ〜、そうなんだ。


そんな事があったのね。


なら、明日の夜にみんなで

行ってみない？」


「いいね。みんなで行って

みようじゃないか」



お姉さんと旦那さんはかなり

乗り気だった。


他のみんなも笑顔で頷いた。





母は先に布団の中に入った。


私は祖母とおはぎの

下ごしらえをした。



「これでよしと。


あとは明日朝一で作りましょう」


祖母はおはぎを作るのが

楽しみみたいだった。


ニコニコしながら下ごしらえを

していた。



「おばあちゃんはこのおはぎは

誰に教わったんですか？」


「私の母よ。私の母は母の母から。


代々受け継がれているのよ。


紗英ちゃんは百合子から

教わった？」


「小さい時に二回くらい…


でも、今は全然覚えていません…」


「そう… でも大丈夫！


私がしっかり教えてあげるからね」



祖母は笑顔でガッツポーズを小さく

してみせた。


その笑顔には嬉しさと寂しさの

両方が見えた。