さようなら

それからお見合いの日まで、

僕は毎日何をしていたのか

あまり覚えていない。


そして12月23日、火曜日、

お見合いの日の朝、

紗江から電話が来た。



「もしもし… 敬太?」


「ああ… どうした、紗江…」


「あのね… 実はね…

お見合い今日だったんだけど、

向こうの都合で

明日になっちゃったの…」


「え? 明日は…」


「うん… ごめん…

お見合いが終わったら

すぐに行くから

先にディズニー行ってて

もらえるかな…」


「そうか…

分かったよ。先に行って待ってる」


「うん… ありがとう」


僕は電話を切った。


紗江の声がとても

愛しく聞こえた。


僕は何度も紗江の声を

思い出した。



そして次の日…


12月24日…


お見合いはお昼からだ。

僕は少し早くめに支度をして

家を出た。


街はクリスマス一色だ。

ジングルベルが流れる道を

たくさんのカップルたちが

手を繋ぎ歩いて行く。


僕はちょうどお昼くらいに

マスターのレストランへ行った。



『カラン カラン…』


「いらっしゃい」


「こんにちは、マスター」


「敬太…」



僕はお見合いが今日になった事、

これからディズニーに

行く事を話した。


「そうか… 今日になったのか…

ディズニーの約束してたのにな」


「まぁ、仕方ないですよ…」


「ディズニー混んでて

入れないんじゃないか?」


「かもね…

まぁ、もし入れなかったら

ここに来るよ。

ケーキでも用意しておいて」


「クリスマスにこんなちんけな

店に来るんじゃねーよ。

もっといいレストランに行けよ」


「クリスマスはあんまり

お客さん来ないから

折角オレたちが来てあげようって

言うのにさ」


「フンッ 誰も来なくていいやい」


マスターは相変わらず

心を和ませてくれる。