不敵にdanger


「あ。待って、あんた入試1位の人だよな」


 昨日は一生分の注目を浴びてしまったので、今日は"極力目立たない"を目標にして。

 登校ラッシュの時間帯を避けるべく、朝7時前に校門をくぐったのだけど……読みが甘かったみたい。

 部活の朝練かなにかで早めに来たらしい男の子に、さっそく声を掛けられてしまった。挙句。


「やっぱそうだ、入学式で花ぶちまけてた女!」


 人差し指をビシッとこちらに向けてそんなことを言われるものだから、一旦フリーズ不可避である。

 ううっ。“花ぶちまけてた女“だなんて、すごいさいあくな覚え方されちゃってる……っ。

 まあ私が悪いんだけどね100パーセント。

 いやでも、あれは藤沢先輩の生け花が美しすぎたせいでもあるから、やはり藤沢先輩もチョット非があるのでは……!

 ていうかっ、人を指差しちゃいけませんって小さいころ習わなかったんだろうか?!


「入試成績1位の北森うたチャンだろ」

「っ、あ、えっと」

「昨日はすごかったな色々と」

「すっ、すみませんでした」


 つい謝罪の言葉が口をついて出る。別に私この人に対してはなんにも悪いことをしてないのにね。


「あの藤沢睦が入学式のために生けてくださった花をわざわざ転んで台無しにするなんて、あんた、ずいぶんといい趣味をお持ちのようで」

「っ、あれはわざと転んだわけじゃ……」

「ま、俺あの人嫌いだし、いい気味だったけど」

「……へ?」